以前の記事にも書きました。映画『ほどなく、お別れです』の公開が迫ってきましたね。
最近映画館に立ち寄ったら、一番目につく場所に一番大きいポスターが貼られていました!
ファンタジーやフィクションでない、リアルな社会映画ですし、更に俳優陣が豪華なだけあって注目度が高いです。同業者としてもずっと気になってしまいます。
公開前にも関わらず、予告編を観て印象に残った人も多いのではないでしょうか。
その中でも短いカットながら強く目に焼き付くのが【納棺】のシーンです。
目黒蓮さん演じる(漆原礼二)のワンシーンです。
静かな所作、張り詰めた空気、そして“別れ”の気配。
ただ予告編だけを観ると、「納棺ってこういうものなんだ」「重くて、冷たい」
そんなイメージを抱く人もいるかもしれません。
私はそのシーンを観て実際の納棺師はどんな想いでこの仕事と向き合っているのだろう?という疑問が浮かびました。
私は葬儀業者なので同僚である彼らの仕事ぶりは間近で見てきたし、本当に仕事が丁寧で綺麗なんです。
同僚として、その技術や現場での立ち振る舞いに安心感があり、仲間としての信頼があったからこそ、「実際はどんな想いで故人と向き合っているのか」を改めて知りたいと思ったのです。
そこで今回、長年現場に立ち続けている“とある納棺師”の言葉を借りて、映画をより深く味わうための視点を書いてみたいと思います。

一番目立ちます
《 とある納棺師の想い》
【納棺】という仕事は単に故人の身支度を整える作業ではありません。

ご納棺の儀は、故人の旅立ちが安らかであるよう祈りながら、「末期(まつご)の水」で唇を潤し、「湯灌(ゆかん)」で身体を清め、死装束への着替え、死化粧を施して、棺に納め、副葬品を添える一連の儀式です。
彼は処置を行う前に心の中で、あるいは小さな声で故人に話しかけるそうです。
『失礼します』『綺麗になりましたね』
それは決して儀式的なものだけではなく目の前にいる“人”への敬意です。
毎回の現場では、故人に対して
「学ばせてもらっている」「この時間に感謝している」
そう感じながら日々故人と向き合っていると言います。
また、着物の捌き方、化粧筆の動かし方、立ち居振る舞いなど、すべての所作を美しく見せることを強く意識しているそうです。
それは技術の誇示ではなく、「人は美しいものに心を動かされるから」という彼なりの想いからきています。
『だからこそ、その場の空気や時間そのものが、遺族にとって何かしらの救いになればと願っている。』
と、彼は自身の“信念”とも言える大事な胸の内を時間をかけて、丁寧に言葉として私に預けてくれました。
実直で職人気質な彼らしい言葉でした。

※写真はイメージです
《究極のグリーフケア》
彼は「感動」という言葉を使うことに少し戸惑いながらもこう話してくれました。
『大前提として大切なのは、遺族とのコミュニケーションがあること。』
『その上で、故人を丁寧に整えること。そこに納棺師それぞれの“色”が重なっていく。』と語ってくれました。
私は納棺師のような職人でもないし、人体の知識もないですが、彼の言う”色”とは葬祭ディレクターで言うところの立ち振舞に近いと感じています。
押し付けるものではなく、主役はあくまで故人と遺族です。
納棺師の仕事はその時間をそっと支え、必要以上に前に出ないこと。
だからこそ深く静かなケアになるのだと思います。
そして一通りの処置が終わり、まるで眠っているかのような穏やかな表情の故人を見た遺族がどれほど感動され喜ばれてきたか。
それを間近で見て感じてきたからこそ「感動」も立派なグリーフケアなのだと思います。
それが彼にとっての【納棺師】という仕事の在り方でした。
そんな彼の話を聞いて改めて感じたのは、グリーフケアは「特別なこと」ではないのかもしれません。
故人を丁寧に扱い、その姿を遺族が目にすること。
それだけで人は安心したり救われるのだと思います。
言葉のチョイスや演出もケアの一つではありますが、「この人は大切にされている」と感じられる”時間そのもの”が一番のグリーフケアなのかもしれません。

※写真はイメージです
まとめ
最近は予告編だけでなく、俳優陣のインタビュー動画も複数アップされて各俳優が演じた役柄についてのそれぞれの思いを垣間見ることが出来ます。
これらの短い映像の裏側には、こうした現場の想いや積み重ねがあることを知るだけで、本編を観たときの感じ方はきっと変わるはずです。
映画のシーン1つ1つに共感し、自身と重ねて観ることもあれば、このような同業者の記事を読んでくれることでさらに理解を深めてもらえる。
映画の見方、楽しみ方は人それぞれです。
映画『ほどなく、お別れです』を観る前に、“実際の納棺師の視点”を知ることで、その一瞬一瞬が、より立体的に見えてくるのではないでしょうか。
映画の紹介記事はこちらから↓



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