神社の鳥居は元々白かった?赤色に変わった4つの理由

三重県桑名市にある「多度大社(たどたいしゃ)」の大鳥居(県道26号線をまたぐ巨大な鳥居) 出典:Wikimedia Commons / Asturio Cantabro, CC BY-SA 4.0 文化探訪
三重県桑名市「多度大社」の大鳥居 出典:Wikimedia Commons / Asturio Cantabro, CC BY-SA 4.0

神社に参拝するとき、当たり前のようにくぐっている鳥居。

​鳥居といえば鮮やかな朱色のイメージが強いですが、伊勢神宮などの歴史ある神社に行くと、木そのものの白い鳥居を見かけることがありますよね。

​『なんで神社によって鳥居の色が違うんだろう?』と気になって調べてみたところ、実は鳥居は元々白く、時代の流れとともに朱色へ変化していった歴史がありました。

明治〜大正時代の詩人・英文学者である野口米次郎(のぐち よねじろう)が1914年に出版した英語のエッセイ集『Through the Torii(鳥居をくぐって)』という本の扉絵(または挿絵ページ)の画像 出典:Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

ちなみに…… 鳥居は【日本を象徴する美しい建造物】として、なんと100年以上も前から海外でも注目されていました。

1914年に出版された『Through the Torii(鳥居をくぐって)』という洋書エッセイがあるほど、外国人の目にも昔から深く印象に残る存在だったようです!

(※画像キャプション例:1914年に出版された英文エッセイ集『Through the Torii(鳥居をくぐって)』)

​今回は、鳥居が持つ本来の役割や、白から朱色へ変わった4つの理由を実体験も交えながら解説していきます!


海外にも存在する鳥居に似た構造物と鳥居の由来

​「そもそも、なんであの形なの?」と気になりませんか?実は海外にも、日本の鳥居と驚くほど似た構造物があることが分かっています!

  • 古代インドの仏教建築: トラナ
  • 中国: 華表・牌楼
  • 韓国: 鳥竿(ソッテ)
  • ユダヤなど、多岐に渡ります。
李自成行宫牌楼 出典:Wikimedia Commons / 作者名, CC BY-SA 4.0
李自成行宫牌楼 出典:Wikimedia Commons / 作者名, CC BY-SA 4.0
​ワビスケ
​ワビスケ

えっ!インドや中国にも鳥居に似た建物があるの!?たまたま偶然同じ形になったのかなぁ?

​シトリン
​シトリン

日本は島国だから、海外から渡ってきた文化がルーツという説もあるんだよ。確たる証拠はないけれど、国を越えて形が似ているのは歴史のロマンを感じるね!

​たまたま偶然なんてことも否定はしませんが、そんな奇跡的に形状が似ることなんてあるんだろうか?と思ってしまいますよね。

​いずれにしても鳥居の起源には諸説あり、これという確たるものはありませんでした。なんともハッキリしない由来説ですが、それだけ分かっただけでも多少の納得感は得られました。

鳥居の名前の由来

鳥居の由来にはいくつかの説があるとお話しましたが、鳥居の名前について、特に有力なのが天照大御神に関するお話です。

その昔、天照大御神が天の岩屋に隠れた際、八百万の神々は常長鳴鳥(とこよながなきどり)という鶏を鳴かせました。

その鶏が止まった木が鳥居の起源になったという説があります。これは【鳥が居る】という漢字そのままの意味にも当てはまります。

その他、”人が通り入る場所”からそう呼ばれた説もあることが分かりました。


鳥居の役割

​神社の入り口にある鳥居は、【ここから先は神聖な場所である】という目印になります。

​入り口であり門でもあるのですが、それ以前に鳥居には、神様のいる神域と、人が暮らす俗世を分ける境界(結界)という重要な役割があります。

​私自身、もともと鳥居の詳しい役割についての知識はなく、調べて初めて深い意味を理解しました。

​俗世との境界と知った時は、『言われてみればそうだ。身近すぎて意識してなかったけれど、役割を知ると納得できるな』と思いました。

​神域へお邪魔させてもらう感覚は以前からありましたが、結界としての役割だと分かったことで、鳥居をくぐるときの引き締まる感覚に納得がいきました。

なぜ、神社には結界が必要なのか?

​結論からお話しすると、神社に結界が必要とされるのは、”神様が穢れ(けがれ)を嫌う”と考えられているからです。

​穢れの語源は[気が枯れる]とされているので、マイナスエネルギーと捉えるとイメージしやすいと思います。

​穢れとされるものを一覧にすると、このようなものが多いです。

ストレス / 不安 / 嫉妬 / 妬み / 怒り / 病 / 老い / 死

ワビスケ
ワビスケ

うわぁ…ネガティブな気ばかりだね。もし負のオーラ全開の人が近くにいたら、僕でも『勘弁してくれ〜!』って逃げ出したくなっちゃうよ(笑)

シトリン
シトリン

ふふっ、でも神様も同じなんだよ。こういう気が枯れた状態が神域に入ると、神様が去ってしまったり、本来の力を発揮できなくなると考えられてきたんだね。

​神聖な神社は清らかでなければならないため、災いや不幸につながる穢れを遮断する鳥居、すなわち結界が絶対に必要だったというわけです。

なぜ敷地内に鳥居が何本もあるのか?

​鳥居について掘り下げてみると、敷地内に複数の鳥居があることに気付きます。

​『結界の中に、さらに結界があるのかな?』と疑問に思って調べてみたところ、これにもちゃんと意味がありました。

​鳥居をくぐるたびに、自身についた穢れが少しずつ落とされ、神様のいる神聖な空間へ近づいていくという意味があるそうです。

​一参拝者として、神聖な場所へ入る意識が生まれ、気持ちが引き締まる思いになりますね。


鳥居の形状は主に2種類

​鳥居の役割が理解できたところで、次は鳥居の種類についてお話ししていきます。

​代表的な形は、神明鳥居(しんめいとりい)と明神鳥居(みょうじんとりい)の2つです。

神明鳥居(しんめいとりい) | 直線的でシンプル

神明鳥居は、笠木(かさぎ)と呼ばれる一番上の横木が比較的まっすぐで、全体的に直線的な形をしている鳥居です。

シンプルですっきりとした印象が特徴で、上部の横木に反りがなく、柱も垂直に立っているものが基本ですね。

神明鳥居 図解 ※生成AIにて作成
神明鳥居 図解 ※生成AIにて作成

明神鳥居(みょうじんとりい) | 曲線的で鮮やか

明神鳥居は、上部の笠木に反りがあり、両端が上向きに曲がっているのが特徴です。

笠木の下に島木(しまぎ)と呼ばれる横木が付く形式も多く、神明鳥居と比べると、装飾的で華やかな印象があります。

明神鳥居 図解 ※生成AIにて作成
明神鳥居 図解 ※生成AIにて作成
シトリン
シトリン

※鳥居にはさまざまな派生形式があり、細かな形状は種類によって異なります。鳥居を見分けるときは『色』よりも『形』に注目するのがポイントですよ!笠木(一番上の木)が反っているか直線的かで、タイプが見分けられます。


白木の鳥居と【白】が持つ意味

白木の鳥居とはどんなものか

​あえて塗装を施さず、木の自然な色を生かした鳥居を指します。

​最近行った熱田神宮の鳥居を白い鳥居だと思っていたのですが、写真を見返すと、真っ白というより年月が経って落ち着いた色合いに見えたことに気づきました。

熱田神宮の正門 第一鳥居
熱田神宮の正門 第一鳥居

​神道において【白】が持つ意味

​古くから神道では、白は【清浄】や【神聖さ】を表す特別な色とされてきました。

​ただ、ここでややこしいのが”白木”(素材の仕上げ方)と”白色”(色そのもの)は別物ということです。

ワビスケ
ワビスケ

『白木の鳥居があること』と『昔の鳥居がすべて真っ白だったこと』は、また別の話なんだね。日本語って難しい〜。


鳥居が朱色になった4つの理由

​本来の鳥居は白(木や石の色)だったわけですが、時代の流れに伴い、鳥居は形と共に色も変化していきます。

​私自身、春日大社へ参拝したときに見た、大きくて鮮やかな朱色の鳥居は、遠くからでも一目で分かるほど目を引き、『日本人でも感動するんだから、外国人観光客ならなおさら魅了されるだろうな』と強く印象に残っています。

​では、なぜ朱色へ変わっていったのでしょうか?主な理由は以下の4つです。

​仏教の伝来・神仏習合 | 寺院建築の影響で鮮やかな朱色が取り入れられた

白木の鳥居が朱色(赤)へと変わっていった歴史的な経緯には、仏教の伝来と神仏習合にあり、時代の変化と共に特徴も変化していきました。

歴史の流れをまとめてみると以下のような流れになります。

・飛鳥時代以前…日本独自の白木の鳥居が中心
       ↓
・飛鳥〜奈良時代…仏教·中国文化が日本へ伝来(お寺が立ち始める)
       ↓
・平安時代…神仏習合が本格化(ここで朱色の鳥居が登場)
       ↓
・江戸時代…庶民の信仰と結びつき、全国的に拡大

飛鳥時代から奈良時代にかけて、中国から仏教文化が日本に伝わると同時に、当時の日本にはない、鮮やかな中国風の建築ももたらされました。

鮮やかな朱色で彩られた寺院は、当時の日本人にとって息をのむほど美しい建築だったはずです。

平安時代になると、【日本の神様は、実は仏様が姿を変えて現れたのだ】という思想(神仏習合)が広く信じられるようになりました。

それに伴い、神社の境内にお寺が建てられたり、お寺の中に神社が作られていったんですね。

その中で、寺院建築の影響を受け、神社の鳥居や社殿にも朱色が取り入れられるようになりました。

丹(に)=水銀の防腐効果 | 木材の腐食やシロアリを防ぐ実用的な理由

古くから鳥居に使われていた朱色の塗料には、丹(に)と呼ばれる硫化水銀が使われていました。

丹には、防腐・防虫・防カビといった効果があるとされています。木材の腐食やシロアリを防ぐことで、鳥居全体を長持ちさせていたそうです。

実際は科学的効果なのですが、当時の人達にとっては、目に見えない力として信仰されていました。

その優れた効果を科学ではなく、神秘的な力として受け止めていたのかもしれません。

硫化水銀(精製された鮮やかな赤い粉末・顔料の状態) 出典:Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0
硫化水銀(精製された鮮やかな赤い粉末・顔料の状態) 出典:Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0
ワビスケ
ワビスケ

へぇ〜!防腐効果かぁ。……って、ちょっと待って!水銀って猛毒じゃなかったっけ!?防腐剤以前にそっちが気になっちゃうんだけど…(笑)

ふふっ、鋭いツッコミだね!当時の人々からすると、科学というより、シロアリを防ぐ不思議な魔法の塗料は神様から授かった強いパワーに見えたのかもしれないね。

ワビスケがビックリしたように、水銀と聞くと驚いてしまいますよね。硫化水銀と水銀の違いも気になったので調べてみました。

鳥居の防腐剤(丹)に使われていた【硫化水銀(りゅうかすいぎん)】と、一般的な毒性で知られる【水銀(純粋な金属水銀や有機水銀)】は、化学的には全く別の性質を持つ物質です!

水銀の言葉が入っているため混同しやすいですが、一言でいうと、”水銀単体”か”他の元素”(硫黄)とがっちり結合した化合物かの違いです☝️

…と言われても頭の上に?が出てくると思うので、図解と一緒に、鳥居の他に何に使用されていたのかを知ると分かりやすいかもしれません。

水銀と硫化水銀の違い図解 ※生成AIにて作成
水銀と硫化水銀の違い図解 ※生成AIにて作成

Q.人体への影響はある?

A.結論から言うと、通常の朱塗り鳥居や触れる程度であれば、人体への有害な影響はほぼ無い(極めて低い)とされています。

身体に吸収されにくい(無害に近い理由)

水銀中毒が起きるのは、水銀が体内に溶け出して血液や神経に届くからです。 しかし、硫化水銀は胃酸などの強い酸にも溶けないため、万が一誤って少し飲み込んでしまっても、体内で消化・吸収されずにそのまま体外へ排出される性質を持っています。

昔の絵の具や口紅にも使われていた

実は、硫化水銀(辰砂)は鳥居の塗料だけでなく、古くは日本画の朱色絵の具や、女性の口紅(紅)、さらには古代中国の不老長寿の薬(漢方)としても使われていた歴史があります。

注意点(過剰な加熱や粉塵)

ただし、完全に100%安全というわけではありません。

  • 燃やす(加熱する): 高温で熱すると化学結合が壊れ、有毒な”水銀蒸気”が発生します。
  • 吸い込む: 粉塵を大量に吸い込むのは健康上よくありません。

そのため、職人さんが塗料を調合・塗布する際には吸い込まない工夫が必要ですが、完成した鳥居を見たり、触れたりする参拝者への健康被害は心配ありません。

ワビスケ
ワビスケ

えぇ!?水銀って聞いて焦ったけど、鳥居に塗ってあるのは、水や胃酸にも溶けない特別な水銀(硫化水銀)なんだね!

シトリン
シトリン

そうだよ。だから雨に濡れても溶け出さないし、昔は口紅なんかにも使われていたんだよ。でも、熱すると危険だから“火気厳禁”の防腐剤だったんだね。

魔除けの意味 | 陰陽五行思想で赤は邪気を払う”火”・” 太陽”の象徴

朱色(赤)は、陰陽五行思想において火や太陽を象徴する色とされています。

火や太陽は力強い陽のエネルギーを持つため、邪気や災いを遠ざける色として古くから考えられてきました。

そのため、鳥居を朱色で満たすことで、陰の気を持つ魔や邪気は近づくことができないと信じられていました

夜の炎(Flames in the night) 出典:Wikimedia Commons / Patrick Hendry, CC BY-SA 4.0
夜の炎(Flames in the night) 出典:Wikimedia Commons / Patrick Hendry, CC BY-SA 4.0

生命力や繁栄の象徴 | 五穀豊穣や願望成就の感謝

朱色には、魔除けだけでなく、命の誕生・五穀豊穣・願望成就への感謝など、さまざまな意味が込められています。

生命を象徴する色と聞くと、多くの方は体内を流れる血を思い浮かべるのではないでしょうか。

古代では、血は生命そのものであると同時に、強い生命力を表す神聖なものと考えられていました。

そのため、朱色は生命力や繁栄を象徴する色として受け継がれてきたのです。

その代表例として知られているのが、伏見稲荷大社の千本鳥居です。これは五穀豊穣や願いが成就したことへの感謝を表し奉納されたものとしても知られています。

伏見稲荷大社の千本鳥居 出典:Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0
伏見稲荷大社の千本鳥居 出典:Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

伏見稲荷の千本鳥居なども有名ですが、実は私自身、まだ伏見稲荷には行ったことがありません。ですが、こうして由来を調べたことで、次は絶対に自分の目で千本鳥居を見てみたい!と参拝へのワクワク感が一気に高まりました。


今も白い鳥居がある神社

​現在でも、国内にはあえて朱色にせず「白い鳥居」を残している神社がいくつもあります。その一部を紹介します。

​・桜井神社(福岡県糸島市)
・唐津神社(佐賀県唐津市)
・鵜原八坂神社(千葉県勝浦市)
・伊勢神宮(三重県伊勢市)
・熱田神宮(愛知県名古屋市)
​・明治神宮(東京都渋谷区)
・済渡寺(岡山県新見市)

実際に参拝して感じた歴史と、写真で見て感動した驚き

​伊勢神宮や熱田神宮には何度も参拝していますが、朱色の鳥居とは違った重厚感と歴史の深さを感じます。

​一方で、今回の記事を書く中で知って『うわ、ここは行ってみたい!』とパッと目を引かれたのが、福岡県糸島市の桜井神社です。まさに”純白”という言葉がピッタリで、鳥居の奥にある夫婦岩も含めて、神聖な雰囲気が写真からもビンビン伝わってきました。

福岡県糸島市 桜井神社の鳥居 イメージ
※画像はイメージです
ワビスケ
ワビスケ

海の中や砂浜にポツンと立つ白い鳥居も幻想的だよね!行ったことがないと『どこからが神域なんだろう?』とか考えちゃう。青空や夕焼けに映えて写真映えも最高!

​また、岡山県新見市の済渡寺には、なんと白い鳥居の千本鳥居が存在することを知り、驚きました。

一口に白木の鳥居と言っても、神社によって驚くほど個性が違いますよね。

岡山県新見市『済渡寺』 イメージ
岡山県新見市『済渡寺』

【体験談】全ての神社が朱色になったわけではない!

ただ、全ての神社が朱色に変わったわけではありません。現在でも白木や石の鳥居を残す神社があり、日本古来の姿を今に伝えています。

私の住んでいる地域から近いこともあり、伊勢神宮や熱田神宮には何度も参拝に行っているのですが、朱色の神社とは違った「重厚感」と「歴史の深さ」を感じます。 特に伊勢神宮の第一鳥居の大きさは、何度訪れても圧倒されるほどの見応えがあり、まさに伊勢神宮を象徴する名物の一つだなと感じます。


まとめ:鳥居の色の違いを知ると神社参拝がもっと楽しくなる!

神社を訪れる目的は人それぞれです。『写真映えする鳥居を見たい』『参拝や御朱印が目的』など、どれも素晴らしい楽しみ方だと思います。

​今回は鳥居の”色”に注目してみましたが、こうした歴史や違いを知っておくだけで、いつもの参拝がちょっと面白くなりますよね。

​ちなみに、色が白くても造り自体は明神鳥居になっている場合もあったりして、調べれば調べるほど鳥居って不思議な存在です。

​次に神社を訪れた際は、ぜひ鳥居の形や色にも注目してみてくださいね!

明治神宮 南参道第一鳥居 出典:Wikimedia Commons / [作者名], CC BY-SA 4.0
明治神宮 南参道第一鳥居 出典:Wikimedia Commons / [作者名], CC BY-SA 4.0

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